平成16年度の日立市地域産業創造賞の受賞事業を紹介します。


 

(1) 大賞事業(1件)

事業名

認証セキュリティシステムフレームワーク(商品名:ATFRAME)の製品化

企業名

(有)オフィスエムアンドエム 日立市会瀬町3-25-11 TEL 34-5601FAX 34-5604

事業概要

 本事業は、『認証セキュリティシステムフレームワーク』の製品化である。近年、社会問題ともなっているコンピュータからの個人や会社情報の流出に対処するソフトウェアを開発した。既存のセキュリティソフトは、利用者のモラルを問うシステムであったのに対し、本ソフトは「抑止」「禁止」をコンセプトにしている。「個人情報保護法」の施行も追い風になるものと予想される。

選考理由

・社内の既存情報システムをそのまま活かせるセキュリティソフト

 競合製品のセキュリティソフトは、社内情報システム全体を再構築しないと導入できないのに対して、本ソフトは後から認証システムを追加できるところに特徴がある。また、それぞれのコンピュータごとにセキュリティの設定が可能で、認証デバイス(指紋、指静脈、ICカードなど)も自由に変更できるなど、自由度の高いシステムが評価された。

・中小企業向けの製品開発

 コンピュータ導入数で100台以下の中小企業を対象に、価格は競合製品の1/3程度といった高いコスト競争力が評価された。

・地域のソフト系ベンチャーの先導者

 日立グループを退職し創業してから7年を費やし、ようやくオリジナルのソフトウェアの製品化に成功した。地域におけるソフト系ベンチャーの先導者のひとりとして、他社に勇気と触発を与えることが期待される。


(2) 奨励賞事業(3件)

事業名

建設機械主軸アーム用軸受けの加工技術確立

企業名

マルイアドバンス()日立市森山町5-8-18 TEL 52-2074FAX 52-2057

事業概要

 本事業は『建設機械主軸アーム用軸受けの加工技術確立』である。この加工技術は、従来から蓄積された焼結合金の加工技術をベースに、顧客の開発した潤滑油を含浸した新しい焼結金属を加工するために技術を高度化したものであり、技能的色彩の強い製造技術である。

選考理由

ものづくりノウハウを生かした自己潤滑材料の加工技術の確立

 主要な顧客である焼結合金メーカーの開発した、グリスやロウを含浸させた焼結合金の加工技術を確立した。この加工技術は国内では当社にしかできないノウハウである点が高く評価された。

東南アジアなど、建設機械のメンテナンス体制の良くない地域において、メンテナンスフリーで使用できる時間を飛躍的に伸長させるために、潤滑油などの補給を要さない軸受け開発のニーズに対処するため、メーカーでは潤滑剤を含浸させた素材を開発した。ところがこの素材の加工は非常に難易度が高く、数社が挑戦したが成功したのは当社だけであった。

・地域の大学の活用

含浸させた潤滑油等が適度に焼結合金の気泡からにじみ出るようにする、研磨と切削の組み合わせを、茨城大学システム工学科の協力を得て、経済性や品質などからみた最適性を統計学的に割り出している点が、産学連携という視点から評価された。

・高い雇用拡大への貢献

 当該加工に従事する従業員は、平成9年の事業着手時から年々増加し、現在では40名を数え、その高い雇用効果が評価された。

事業名

断熱材が不要なクリーンな気体加熱器の開発

企業名

新熱工業()日立市留町1270-33  TEL 53-8666FAX 53-8668

事業概要

 本事業は、『断熱材が不要なクリーンな気体加熱器の開発』である。この気体加熱器は、断熱材を使わずクリーンで熱損失が少なく、コンパクトな構造であるところに特徴を有する。半導体製造装置における加熱工程でのニーズに基づき開発された製品であるが、上記、構造的特徴を活かした新分野進出が期待される。

選考理由

・顧客情報、市場性をにらんだ得意技術による製品開発

 当社の得意技術である工業用ヒーター技術をベースに、構造的な工夫により顧客の要求に柔軟に応える加熱器を開発するなど、その高い技術力が評価された。

半導体や電子部品の製造工程では、加熱工程がいくつも存在している。そこでは、省エネや省スペース、クリーン度などを要求されているが、既存の断熱材を使用する加熱器では熱が外に逃げる分エネルギー損失が大きく、かつスペースを要する、粉塵が発生するなどの課題を抱えていたが、これを一挙に解決したのが当製品である。

・豊かな市場性

 液晶パネルや半導体の製造工場における需要が高まり、既に韓国への納品も決定するなど、その拡大している市場性が評価された。

事業名

高効率と省エネルギーの業務用生ゴミ処理機の開発

企業名

(株)バイオクリーン 日立市大沼町1-28-10 TEL 34-5371

事業概要

 応募事業は、『高効率と省エネルギーの業務用生ゴミ処理機の開発』である。具体的には、共同出資者の1社が既に確立した家庭用生ゴミ処理機の技術をベースに、高効率で省エネ対策を講じた業務用生ゴミ処理機の開発を行った。日立市の学校給食調理場にて実証実験をするなど、地域性を重要視した事業でもある。

選考理由

・産学連携と中小企業による共同事業の成功事例

 当事業は、東北大学や神奈川工科大学、産業技術総合研究所などの協力を得て進められるなど、産学連携事業の成功事例として高く評価された。

また、地域中小企業9社による共同出資会社の設立や製造工程の分担など、共同事業としての先導性も高く評価された。

・ランニングコストを1/3にした省エネ型業務用生ごみ処理機の開発

ユーザーを公共施設等にしているが、問題になるのは初期投資額よりも、むしろランニングコストであった。そこでソーラーパネルやソーラーウォーマーを導入し、省エネルギー化を進めランニングコストの低減を図った。