平成13年度の日立市地域産業創造賞の受賞事業を紹介します。

(1) 大賞事業(1件)

事業名 パーツフィーダーの開発、販売
企業名 (株)ティー・エム・ピー   日立市大和田町645 TEL 52-6981
事業概要   本事業は、平成元年頃から開発を始めた部品供給装置「リニア型パーツフィーダー」であり、徐々に改良を重ねて一応の完成を達成することができた。「リニア型パーツフィーダー」は、従来型のボールフィーダーに比べ、部品を傷つけない、設置空間が小さい、軽量、安価であるなどの特徴がある。
選考理由

優れた独自性

  従来品の部品供給方式とは全くことなる発想から独自に開発した。類似商品は無く、当社の製品に競合するのは機能、コストなどに劣る従来型のボールフィーダーだけであることが評価された。

豊かな市場性

  組立産業が多い日本においては、製造ラインに必要となる部品供給装置は必要不可欠であり、大手企業を中心にその市場は豊かに広がっており、現に確固たる独自市場を確立していることが評価された。

ベンチャー企業としての成功事例

  経営者は大手企業から独立創業し、創業から20年で年商5億円弱、従業員33名の中小企業に発展させており、当地域では数少ない自社製品によるベンチャー企業の成功事例として、他の企業の範となることが期待できるとして評価された。


(2)奨励賞事業(2件)

事業名 有機系悪臭ガスを無臭化する脱臭器の開発
企業名 新熱工業(株)   日立市留町1270−33 TEL 53-8666
事業概要   本事業は「有機系悪臭ガスを無臭化する脱臭器の開発」である。この脱臭器は、生ゴミ処理などにおいて発生する有機系悪臭を無臭にするもので、脱臭効果を高めるために気体の温度を270〜300℃に加熱するヒーターと、脱臭するための触媒(白金)を組み合わせた構成としている。
選考理由

得意技術による開発

  工業用ヒーターの専門メーカーである当社の得意技術である、電気ヒーターの技術を最大限生かした製品開発であることが評価された。

市場ニーズから生まれた製品

  当社は環境に対する意識が高まっている現代社会において、業務用生ゴミ処理機などから発生する悪臭を無臭化する装置に対する強いニーズを背景に、自社の有する電気ヒーター技術をベースに開発を実施した。現在は従来の電気ヒーター企業の製品とと置き換える形で当社の製品が採用され、今後も需要が拡大するものとして評価された。

地域産業への波及効果

  開発した製品は年間300台ほどの販売が見込まれ、売上で9,000万円、外注金額で4,000万円が期待でき、地域経済に対する波及効果も高いことが評価された。

 

事業名 衣類の染み抜き装置の開発
企業名 多賀電気(株)多賀工場    日立市大久保町3−1−1 TEL 36-0474
事業概要   本事業は、クリーニング業界において従来から利用されている自社製品の超音波を利用した足踏みペダル方式の染み抜き装置(スポッター)をベースに、センサー対応による作業疲労軽減と、布地とシミの組み合わせによる最適溶剤の選択、シミ抜き方法を提示するソフトウェアを開発、付加した改良したものである。
選考理由

得意技術に特化した製品開発

  昭和40年から製品化している超音波によるシミ抜き装置にこだわり、製品の深化を追及した開発であり、あくまでも得意技術に特化した開発であることが評価された。

顧客ニーズへの対応

  高齢化しているクリーニング業界の分析から、初心者でも操作が可能であり、職人に蓄積されたノウハウをソフトウェアでカバーするという、業界動向、ニーズを先取りした製品開発であることが評価された。

確立された市場

  昭和40年から販売されているシミ抜き装置は、既に国内だけで60,000台を販売し、推察されるに60%の市場シェアを有しており、当社の主力製品であるばかりでなく、今後の交換需要や海外への販売などの需要も期待でき、市場は比較的確立されていることが評価された。


(3)選考委員特別賞事業(2件)

事業名 横型巻き線システム(単層式)
企業名 吉野電業(株)   日立市滑川町1−5−13 TEL 22-0825
事業概要   応募事業は、従来、巻き取り機を縦した縦型方式で行っていた作業を、安全性と生産性向上、作業負担の軽減のため、巻き取り機を横にした横型方式を開発したものである。
選考理由

新事業分野進出へのツール開発

  当社はマグネットやトランスなどに使うコイルを製造していたが、こうしたものの作業量の減少を克服しようと、防犯システムに必要な電磁波感知機のコイル製造を新規受注するために必要な製造装置を開発したものであり、厳しい経済環境を生き残る中小企業の事例として評価された。

 

事業名 院内物品物流管理システムの開発
企業名 中嶋メディカルサプライ(株)   日立市助川町1−17−9 TEL 21-0500
事業概要   応募事業は、卸売業の新業態開発のひとつとして、病院における医療材料のバーコード化により、使用した医療材料のチェックとその情報のデータベース化を進め、保険請求漏れの防止と適正在庫の管理を実現し、当社の顧客である病院の健全経営に資するサービス分野への進出を図ったものである。
選考理由

新業態の開発

  当社は卸売業として単純に商品を売るだけでなく、顧客の経営に資するサービスを提供する手段として、今回のソフト開発が行われているが、ソフトをツールとしたサービスの提供(物品管理業務代行)が商社における新業態の開発として評価された。