平成15年度の日立市地域産業創造賞の受賞事業を紹介します。

(1) 大賞事業(1件)

事業名

リチウムイオン電池ケース「角型深絞り加工」

企業名

(株)大貫工業所   日立市森山町5−10−8   TEL 53-3821/FAX 53-6839

事業概要

  本事業は、リチウムイオン電池ケースの『角型深絞り加工』」による製造である。東京墨田区の中小企業が開発に成功したとして脚光を浴びていたこの技術であるが、当社では社内においてこの深絞り加工技術の開発に挑戦し、見事に成功した。この技術を利用して競合他社との価格競争に打ち勝ち、市場開拓を推進しており、近い将来の確実な雇用拡大が期待されている。

選考理由

・独自プレス技術の確立

  リチウム電池ケースへの深絞り技術については、国内中小企業数社が行っているらしいが、各社ともそのノウハウは極秘事項であり、それぞれが独自に開発した手法である。当社では長年にわたるプレス加工と金型製造技術をベースに、茨城県の開発助成金や茨城大学工学部による品質評価などを利用し、この加工技術を確立したことが評価された。

・豊かな市場性

  開発当初の時期には、各メーカーの在庫調整時期であったため受注獲得に苦戦したが、茨城県の首都圏受注エキスパートによる営業活動と新聞記事による当社の深絞り技術の紹介を契機に商社との取引がスタートし、以後は携帯電話やノートPCやデジカメなどの市場拡大とともに受注を拡大した。今後も更なる拡大が期待され、世界市場の10%のシェアが見込まれている。

 一方、電気自動車などIT関連以外の分野での受注拡大も期待できるなど、市場性の豊かさも高く評価された。

・雇用拡大への期待

  リチウムイオン電池ケースの製造は500万個/月が想定され、新規雇用も7名程度が期待できることが評価された。

(2)奨励賞事業(2件)

事業名

配電盤の耐電圧試験用短絡ツールの開発

企業名

(株)高橋工業  日立市金沢町3−12−4  TEL 33-0913/FAX 33-0937

事業概要

  本事業は配電盤の耐圧盤試験用短絡ツールの開発である。既にこの製品は、開発、実用化されている装置が使いにくいことを背景に、自社独自のアイデアで開発したもので、従来製品に比べて、安い、使いやすい(作業時間が短縮できる)、故障しにくいなどの特徴を備え、構造も極めてシンプルなものとなっている。

選考理由

・顧客ニーズに対応した製品化

  主要な顧客である配電盤メーカーの製品ニーズを満たす製品開発である。盤の出荷時に義務付けられている短絡試験を、短時間で確実に実現するための器具であるが、これも顧客の作業状況を熟知した上での開発であり、その姿勢は前回受賞製品「ゾーンセイバー」に通じるとして評価された。

・社内の開発体制の組織化

当社では1回/月の頻度で開催される「新分野開発委員会」を組織しており、ここでの提案が本製品などの開発推進の起点となっており、その開発への取組姿勢と社内体制が高く評価された。

・地域産業への高い効用性

  当製品は企画・設計は社内で行うが、プレス、板金、塗装などの製造工程の全てを外注しているため、量産による地域産業への波及効果の高さが評価された。

 

事業名

普通車・大型車の電動パワステ用平面整流子の開発

企業名

(株)河村製作所   日立市大みか町2−2−12  TEL 52-1991/FAX 53-4824

事業概要

  本事業は、小型車などで使用されていた電動パワステを大型車でも使用できるよう、平面型の整流子の開発を進めることにより、安定した出力確保と小型化を実現し、燃費向上とエンジン設計への干渉抑制に成功した。

選考理由

・得意技術による開発

  当社の得意技術である冷間鍛造技術の応用により、競合他社では困難な平面型整流子の開発に成功している。得意技術を深化することは、事業転換が容易ではない中小企業において先導的取り組みであるとともに、顧客の要求に柔軟に対応しており、その高い技術力が評価された。

・事業の先見性

  電気自動車の普及が予測される中、当社ではエンジン関連部品の製造が主力であったため、自動車の動力源に左右されない部品の製造を模索していたが、本事業の確立により、その分野での市場開拓に成功しており、先見性の高い事業であるとして評価された。

 

(3)選考委員特別賞事業(1件)

事業名

ネットワーク英会話

〜インターネットを利用した英会話の遠隔レッスンシステムの開発

企業名

(有)英語教育研究所  日立市大みか町1-34-16-205  TEL 029-300-7060

事業概要

  応募事業は、当社の登録商標である「フレーズ法」による英会話レッスンを、インターネットを利用して事業化し、顧客拡大を進めるものである。

選考理由

・企画の巧みさと今後への期待

  当社独自の英会話取得法「フレーズ法」は商標登録取得や書籍販売などにより、その実用性への評価は高いが、その手法をさらに広めようとインターネットによる遠隔レッスンシステムを開発し、その事業を推進している。「フレーズ法」と「日本人には日本人による教育」を他社との差別化要素とするとともに、英語教師養成の点では地域住民の活用を心掛けているなど、グローバルな事業展開とローカルな運用システムの巧みさが、今後の事業展開への期待も含めて高く評価された。


過去の受賞事業はこちら・・・